ヒロインの条件
しばらくやりとりをしてから、私はふらふらと自分の席へともどった。足が地につかない気がするし、もうずっと心臓が鳴り通しなので、そろそろ高血圧でバタンと倒れるんじゃないかな。
「具合が悪いなら、帰りなよ」
経理部のみんなが心配そうに声をかけてきてくれたが、なんだか申し訳ない。だって具合が悪いわけじゃなくて、気もそぞろなだけだもの。
私はキョロキョロと周りを見回してから、パソコンでそっと『佐伯日向』を検索してみた。結果の一番上にウィキペディアの記事が載っている。
ウィキペディアに載る人って……すごすぎる。
『好きです』
佐伯さんの低くて甘い声が耳の奥に蘇って、顔がカッと熱くなった。
「野中さん、熱じゃない?」
鈴坂さんの言葉を聞きながら、私は熱い頬を両手でぎゅっと押さえる。
信じられない。私がヒロインになったの?