ヒロインの条件

それが顔に出ていたのか「俺は社長じゃなくていいって言ったんだけど、おじさんが俺の名前が有名だからトップにいたほうがいいって言われてさ」と、説明した。

「顔出ししなくていいんですか?」
「いいよ、むしろそのほうがいい。めんどくさいじゃん、いろいろ」
「へえ」

だから「社長」って呼ばれるの、嫌なのかなあ。

「俺が野中のこと見つけたのは、廊下でダンボールの箱を右と左で一個ずつ持って歩いてたとき。あれ、この瓶開かないな」

佐伯さんはピクルスの蓋をぐいぐい回してたけど、手が滑るのかうまくいかない。

「貸してください」
私は瓶を受け取って蓋をひねると、バカンと音がして開いた。

「どうぞ」
「サンキュー」
佐伯さんは瓶を受け取って、中からピクルスを取り出して食べた。

「うま。野中も食べる?」
「はい」
ぱくんと一口で食べると、確かに美味しい。

「うまいです」
「だろー」

二人でぽりぽりと食べていると「ああ、そうだ、野中を見つけたときの話だった」と佐伯さんが言う。
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