ヒロインの条件

「もしかしたらあれって……って思ったら、もう毎日野中のことで頭がいっぱいになっちゃって」
そう言ってから、佐伯さんのほっぺたがカッと赤くなった。

「やべ、俺何言ってんだろ」

私もつられて顔が赤くなった気がする。友情の「好き」とは、やっぱり違うのかな。

「ちくしょ、なんで忘れてんだよ」
佐伯さんががしゃんと柵に頭を預ける。

「じゃあ、ヒントお願いします」
「えー、早すぎる」
「だって、全然わかんないんだもん」
「ひでー」

その言い方が可愛くて、つい「あはは」と笑う。それから「じゃあ年齢聞いてもいいですか?」と言った。

「27」
佐伯さんが小さな声で答えた。

「私より三つ上ですね。大学の先輩とか?」
「俺、体育大じゃないよ」
「じゃあ、どこです?」
「マサチューセッツ工科」

私はあまりにも突拍子もない答えに黙ってしまった。マサチューセッツ工科大学に通う知り合いなんか、いるわけがない。
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