ヒロインの条件
この『ブライトテクノロジー』という会社は、品川のオフィスビルの四フロアにあり、近年のインターネット産業の波に乗って、売上が右肩あがりの会社だ。三階上のフロアにいる役員と顔をあわせることはなかったけれど、社員数が二百人ということもあって、知らない人はいないというほど、アットホームで過ごしやすい会社だった。
ということは、私のイメージは社員全員の統一認識だから、ここでヒロインになるなんてことは不可能なのかも。
私は顔を上げてオフィスを見回した。テニスコートほどのフロアには、私のいる経理部と営業部がある。新興企業ということもあり、社員の平均年齢は若く華やかだ。フロアの半数は女性だが、山本さんだけではなく、本当に皆綺麗にしていてる。きっと私の知らない恋模様もたくさんあるのだろう。
いいなあ、私も恋がしたいよ。
そんなことを考えて落ち込みそうになるのを、頬をパンッと一つ強く打って持ちこたえる。試合前にはよくそうやって自分の気持ちをあげていた。
それに、大丈夫、私には漫画がある。よしっ。最新刊を家までなんて待てないから、お昼休みに読んじゃおう。
私は俄然やる気が出来てきて、再び伝票を猛スピードで打ち込み始めた。