ヒロインの条件
気になって振り向くと、営業部でも人が集まっている。営業事務でダントツ一番カワイイ山本さんが、佐伯さんの隣に立っているのが見えた。
美男美女でお似合い。もし私が佐伯さんの隣に並んだら……想像しても、あんまりヒロイン感がないので、思わず笑いそうになってしまった。どう考えても仲のいい友達どまりだ。
ぼんやりそんなことを考えていると、引き出しの中からスマホが鳴る音がしたので取り出してみると、システム管理部の西島さんだ。
ああ、システム管理部にいる佐伯さんのことが聞きたい。
私はすぐにでも返信したい気持ちをぐっとこらえて、業務を行った。そして6時になるとバッと引き出しを開き、スマホを確認する。
西島さんのトークを開くと、『仕事終わったら、ちょっと上がってきて』と書いてある。『上がる』というのはシステム管理部にいくってことで……おお、佐伯さんがいるかもしれない!
私は「おつかれさまでしたっ」と元気良く挨拶すると、更衣室で制服を着替えてシステム管理部のある「6階」に駆け上がった。
いないかなあ、佐伯さん。もう一度ワイシャツ姿が見たい。
西島さんにラインすると『今いく』と短く返事がきて、すぐに西島さんが部屋から廊下へ出てきた。前髪ぱっつんでショートボブだ。
「おつかれ!」
私が挨拶すると「いつもながら、元気〜」と笑う。ラインのメッセージはそっけないけれど、会うといつも優しくて可愛らしいので、大好きだ。