ヒロインの条件

イライラがこみあげて、枕に顔を埋めて「このやろ」と呟く。

なぜお兄ちゃんにイライラするのか考えると、きっとあの人が高スペックすぎて、私が苦戦したことも軽々とこなしてしまうからだと思う。私は自分で言うのもあれだけど、とにかく努力だけでここまで来た。柔道だって才能があったわけじゃない、とにかくたくさんたくさん、他の誰よりもたくさん練習して、強くなった。

だから毎日遊んでいるように見えるお兄ちゃんが、いとも簡単にいろんなものを手にいれるのを見て、腹が立つんだと思う。

考えれば、お兄ちゃんの友達もお兄ちゃんと同種の人たちで、いつもちゃらちゃら遊んでいたように記憶している。冷静に考えてみると、佐伯さんはそんな人じゃないし、まったくの見当違いだった。

「そうだそうだ、お兄ちゃんと同類なわけないじゃん」

私はごろんと仰向けになると、目をつむった。ちゃんと思い出そう、佐伯さんとどこで出会ったのか。
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