ヒロインの条件

「手が早いわね」
目の前から鈴坂さんの幾分とげっぽい声が聞こえてきた。目をあげると鈴坂さんは目を細めて、ちょっと意地悪そうな顔をしている。

「手が早い?」
「王子が入社して翌日にはもうゲットに動いてるなんて、手が早いじゃない」
「……ウェルカムパーティじゃないんですか?」
そんな裏の思惑があるなんて思いもしなかったので、私は亜然とした。

「違うわよーっ、馬鹿ね、野中さんと西島さんは山本さんを引き立てるモブ役に決まってるじゃない」
「そっか……」
言われてみれば、そんな気がする。佐伯さんと西島さんが並んでいるところは、本当に羨ましいほどにお似合いだと思った。

「でも別にオッケーです。お肉好きですし」
そう言って笑うと、鈴坂さんは呆れたように肩をすくめた。

山本さんがどう思っていようと、あんまり何も感じない。むしろ佐伯さんと一緒に週末をBBQだと思うと、それが嬉しくたまらなかった。
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