ヒロインの条件
徐々にお肉が焼きあがり、おいしいにおいが海風と混じって鼻を刺戟する。私はトングを右手に「お肉もうイケますよ!」と声をかけた。
みんなが紙皿を手にBBQの周りに集まったので、端から順番にお肉を入れていくと、山本さんが「これ、家で作ってきたんです、よかったら」と言って、サラダを添えていく。
つくづく、気のつく人だなあ。ああいう人と私が結婚したい。
私が新しいお肉を網の上に並べて振り向くと、佐伯さんは「ここ」と自分の隣の席を指差した。
「あ、ありがとうございますっ」
私はどぎまぎしながら、佐伯さんの隣に座った。佐伯さんの右側には山本さん、向かいには城島さん森山さんのカップルと、西島さんが座っている。
「じゃあ、入社歓迎の乾杯をしましょう」
山本さんが缶ビールを高々持ち上げると、一斉にカンパーイと声を上げた。
お昼からのビールは最高! でもお酒に強くないので、この一本をゆっくり飲むことにする。
「塩見さんって、結構突然入ってきたよね」
森山さんが尋ねると、山本さんも「うんうん」と頷く。「事前にお知らせとか、全然なかったもん。シス管にも中途採用の話って前もってなかった?」
「ありませんでしたね。だから突然でびっくりしました」
西島さんがお肉を頬張りながら答える。「でも塩見さんはとっても優秀なんで、ほんと嬉しいです」
「中途採用の広告って出てた?」
城島さんが森山さんに尋ねる。「出てなかったと思うけど」
「コネ入社なんで」
佐伯さんが笑う。「知り合いの紹介で入ったから」
「誰の?」
山本さんが身を乗り出して尋ねる。
「それは秘密で」
佐伯さんはやんわりとストップをかけた。「相手に迷惑かけちゃうから」
「えー、残念」
山本さんがぷーっとほっぺたを膨らませる。