ヒロインの条件

(2)


基本的に、週末家にいたって佐伯さんは仕事をしている。仕事と言うのか……もしかしたら趣味に近いのかもしれない。生活に必要な時以外は、仕事部屋から出て来ない。

キャンプの翌日、一人であまりにも暇だったので、お昼頃千葉にラインしてみた。すぐに返事が返ってきて、今日は大学もバイトもお休みで、今まで寝てたと言っていう。

『じゃあさ、今日、道場行ってみない?』
『いいよ』

千葉は快くオッケーをくれた。もしかしたら佐伯さんとどこであったのか、今日中にわかるかもしれない。

私は薄手のパーカーにデニムという気軽な格好で、化粧をすることもやめた。皮膚呼吸ができない気がするから、化粧は嫌いなのだ。

佐伯さんに何も言わずに出てしまったら失礼かと思い、勇気をだして初めて佐伯さんの作業部屋のドアをノックしたが、何も返事がない。

中で寝てるとか?

もう一度ノックをしたが、今度もやはり返事なし。どうするか迷ったけれど、結局リビングのテーブルに『出かけてきます、夕飯は外で食べてきます』とメモを残した。

昨日に引き続き今日も晴天。幾分昨日よりも暑い気がするのは、四方をコンクリートに囲まれた東京にいるからだろうか。
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