となりのキミと
ボヤける視界のピントが合うと、そこには仁がいた。
幼馴染の仁は、小学生のときからサッカーひと筋。こんな遠くから見ていても、ウマいなって思うレベル。

時折、半分開いた窓から心地いい風が吹き寄せて、優しく頬を撫でていく。
その温もりに、もうすぐやってくる夏を感じる。

ピピーッ

穏やかさに包まれた体に、笛の音が響いた。
どうやら試合終了らしい。
騒々しい人々の群れが、グラウンドの中で入り乱れている。

そんな光景をぼーっと眺めていると、次の試合が始まった。

仁、目立つなぁ

滑らかなボール裁きに、意識せずとも目が行くのだ。
普段のふざけた様子を少しも感じさせない表情は、なかなかに凛々しい。
こんなこと、本人には内緒だけど。

そのときだ。
なにが起こったのかわからないほど一瞬のうちに、ボールが仁のもとから離れた。
まるで飼い犬のように仁とは違う二本の足にまとわりつくボール。それをいとも簡単そうにコントロールする引き締まった足。
思わず顔に目を移すと、それは知らないオトコではなかった。

あいつ、、じゃん

真宮晴大。それがそのオトコの名前。

仁とのハイレベルな駆け引きは、残りの日本史の授業を乗り切るのに十分な見応えがあった。
時折聞こえる黄色い歓声は、二人の男の人気を物語っていた。

気づけば終了のチャイムまであと5分で、ちょうどそのとき、栗栖先生の話は終わりを迎えた。




マミヤセイダイ。
こいつと私は、隣同士に住んでいる。

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