となりのキミと
彼らがこんなにも真剣に取り組むのには、もちろんわけがある。

まず、女子からの黄色い歓声。
そして、食堂の1ヶ月分の半額チケット。
それを巡った男たちの戦いは、うちの高校の名物だ。

陽の光に照らされた彼らの姿は、これぞ青春と言わんばかりに輝いている。
時折垣間見える男同士の友情が、那奈には少しだけ羨ましく思えた。


あれ?
そういえば。

しばらく眺めていたが、ようやく気づいた。
アイツがいない。

辺りに目を移すと、広いグラウンドの端っこに、見覚えのある人影が見えた。
石段に座り、表情ひとつ変えずに練習を見るその表情は、相変わらずどこか恐ろしかった。

「真宮くん、休憩かな」
私の視線に気づいた美晴がそう言った。

それから、美晴の解説を聞いているうちにいつしか小一時間が過ぎていた。
あいかわらずアイツは1ミリも動かず、ただただ練習を見つめている。
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