3月生まれの恋人
柊×侑月


『最悪・・・』



見上げた空からは大粒の雨・・


師走、12月。

クリスマスを来週に控え、華やかなイルミネーションが街を彩る中

あたしは寒さに震えながら空を見上げた。



『あたしが一体何したっていうのよぉ・・・』






事の起こりはつい一時間程前。

付き合って丁度半年になる彼、和真へのクリスマスプレゼントを選びに来た街で事件は起きた。

彼へ贈る、初めてのプレゼント

営業部に勤める和真には絶対これだと
あたしは最近人気のセレクトショップでネクタイを物色中だった。

クリスマスが近いこともあり、土曜日の午後、店内は大盛況

若い女性やカップルで埋め尽くされたフロアで、聞き慣れた和真の声を耳にした時

あたしは本気で驚いて目を見開いた。



『綾香、そろそろ映画始まる。』



二メートル程しか離れていない、マフラーの飾られた棚の前

声の主に目をやると、見慣れた黒いダウンジャケットを羽織った和真が、

背の高い、モデル係美女の腰に腕を回し
絶妙なタイミングであたしの方に体を向けた
< 1 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop