プロポーズ(第7話)
「そうね。確かに27日が締切りね」
「ひどいです」
「その後、締切りを変更してほしいというメールは?」
問いながら、自分でやったほうが早いので、川中さんのパソコンを自分でスクロールする。
「いえ、ないと思います」
「そうね。来てないわね」
「メチャクチャです」
川中さんがもう一度くり返す。泣きそうになっている。
しかし、締切りを変更してほしいというメールが、もしかすると課長とか係長であるわたしのほうに入っていて、見落としている可能性も考えないといけない。
「小湊課長、そちらには、納期を変更してほしいというようなメールは入っていませんか?」
わたしが訊くと、予想通り、
「ああ、見てくれ」
と、わたしにパソコンをさし出した。女性4人が大きなディスプレイのデスクトップパソコンなのに対し、課長だけが貧弱なノートパソコンだ。
わたしは課長の社内メールをざっとスクロールしたが、そのようなメールは見当たらなかった。
一応、自分のところも検索してみよう思ったとき、営業3課の諸橋健二が飛びこんできた。
ゴルフ焼けだろうか、まっ黒に日焼けした35歳の、気性の荒そうな男だ。2階から駆けおりてきたのだろう、息を切らし、目をつり上げている。