プロポーズ(第7話)
わたしは目の前の男をじっと見つめた。
四方末男(よもすえお)。
冗談みたいな名前だが、芸名でもペンネームでもない。本名だ。四方家の末っ子の三男坊だからというので、そう名付けられたという。
四方末男(よもすえお)。世も末の男。名は体を、みごとに表している。
わたしより5歳も年下の26歳。は、まあ、いいとして。
まん丸い顔に、ニキビをパパパッと散らばせて、あるんだか無いんだかわからない小っちゃな目がふたつ。世界はいつも平和そのもの、みたいな幸せそうな表情をしている。
気さくに世間話をするにはもってこいの人かもしれないが、およそ色恋とは無縁の顔だ。
顔もそうだが、身長もまずい。
167センチのわたしより、目測で2、3センチ低い。
冗談じゃない。ヒールを履くどころか、ぺったんこシューズを履いたって、見おろしてしまう。
かつてはわたしも結婚相手には身長180センチ以上を求めたものだった。
それが25歳になり、28歳になり、30歳になり、178センチでも、いや176センチでも、とじりじり条件を下げ続け、今やせめて168センチはほしいというところまできてしまった。
でもそこがもう限界。せめてわたしより1センチでも背の高い人でないと嫌よ。