プロポーズ(第7話)
泣きながら、ずい分なことを言われた。
カチンときた。
なによ、わたしみたいな生き方って。
まるでわたしが結婚願望のない、生涯独身の、バリバリのキャリアウーマンみたいじゃない。
冗談じゃない。外見からみんなに誤解されるけど、わたしだって寿退社して専業主婦になりたいわよ。
赤ん坊をあやしながら「パパ、今日も遅いでちゅねー。残業でちょーかねー」なんて言って、かわいいピンクのほっぺをツンツン。そんな生活がしたいわよ。バカヤロー!
わたしの殺気に気づいて、川中さんが一歩あとじさる。
こぶしをふり上げそうになるわたしの肩が、後ろからポンとたたかれた。
「まあまあまあ、友高くん」
また、「まあまあ」の小湊課長だ。
「用事があるんじゃしょうがないじゃないか」
「だって」
ふりかえりざまにギロリとにらみつけたが、小湊課長は慣れたもので、少しも動じない。
敵ながらアッパレ。
「残業を強制することはできないんだ。無理強いすれば、パワハラで訴えられる。特に最近はうるさくてね」