プロポーズ(第7話)
「川中さん、とにかく引継ぎしましょう。手持ちの資料、全部見せて」
「はい……あの」
「なに?」
「げ……月曜日に、辞表、出しますから」
「どうして?」
「あの……責任とって」
「……その話は、月曜日になったら改めて、ということにしましょう。定時で帰るんでしょ? 資料、ちゃっちゃと出してちょうだい」
「はい」
こうやって川中さんから資料をもらった。
今回のマニュアルというのは、ハマナカ工業が製作している粉末充填機に、客先の要望でオプションを追加したため、それを標準マニュアルに組み込む、というものだった。
新しい機械のマニュアルを1から起こすわけではないので、その分、仕事の負荷は軽い。
川中さんから渡された資料は多くなかった。
機械の標準的なマニュアルが1冊、それの電子データ、および変更点に関するごく簡単なメモデータが1通。それだけだ。
「こんなのだけで、マニュアルを作れって言われてもねえ」
「来週の月曜日に、設計担当からレクチャーを受ける予定になっていました」
「設計担当はどなた?」
「特殊機械部、設計課の成宮係長です」
来週にレクチャーなんて言っていられない。
わたしは小湊課長といっしょに、4階の特殊機械部へ乗りこんだ。