プロポーズ(第7話)
おまけに収入が。
収入面でも、かつてなら500万円以上を求めたものだった。地方都市であるこのあたりでは、その程度あれば、専業主婦でなんとかやっていけると踏んだ。
それが歳をとるにつれ、480万円になり、460万円になり、今ではせめて400万円というギリギリの線まで落としている。
でも目の前の四方末男、わが社のヒラで26歳。残業をうんとしたって、350万円もいくかどうか。
わたしはだんだんと怒りがこみあげてくるのを感じた。
どうしてこのわたしがこんなのに、こんな場所で、プロポーズされなくちゃいけないんだ。
ドンッ!
と、テーブルをこぶしでたたきつけ、ざけんなよッ、と怒鳴りつけてやろうとして。
いや、待てよ。
親友のシミちゃんの言葉を思い出す。
――サエちゃんは、ただでさえ目つきが怖いんだから、気をつけてソフトな表情を作らないとダメだよ。
よくそう言われたものだ。
ちなみにサエというのがわたしの名前。フルネームは友高冴(ともたかさえ)という。
親友の忠告を思い出したわたしは、ゴホンと咳払いして、まず自分の怒りを鎮めた。