プロポーズ(第7話)
向こうで、玄海部長がしゃべり始めた。
「なにぶん異例のことですので、まずは成宮さんの意思を確認します」
「はあ……」
成宮係長がとまどったようにうなずく。
「本来であれば、これは来週発令するはずでした。しかし、今日、業務のほうがかなり大変なことになっているというので、人事担当の若杉役員の承諾を得たうえで、急きょ発令しようと思います。成宮さん」
「はい」
「あなたを本日ただいま付けで、特殊機械部、設計課の課長に任命しようと考えています。受けていただけますか?」
「は?」
オレが?
と、成宮係長が自分を指さす。
「あのう、成宮さん?」
と、しわがれた声をかけたのは、労働組合の古太刀委員長だ。委員長はさとすように続けた。
「もしこの辞令を受けるのであれば、あなたはたった今から管理職となり、組合員ではなくなります。残業規制の範疇からも外れます。聞くところによると、成宮さんは、今月、すでに相当量の残業をやっておられるとか。そうですよね? 管理職になって、今日もさらにこれから仕事となると、かなりの時間外勤務をすることになります。それが嫌なら、遠慮などせず、辞令を拒否してかまわないのですよ」