プロポーズ(第7話)
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「その机、もうちょっとこっちへくっつけて」
「そっちへ?」
「そう」
ドキュメント課の職場に入るなり、野太い女性の声で指示が飛び、か弱い男の声が応えるのが聞こえた。
ビア樽のように太った若い女性が、小湊課長をこき使って、机を移動させているのだった。
職場の中央に固まっていたわたしたち4人の机は、そのうちの2つが隅っこにどかされ、その上に、4人分のパソコンが積み上げられていた。
パーテーションの前に移動された机に、ビア樽の女性が陣取って、見慣れないデスクトップパソコンに向かっている。パソコンと19インチのディスプレイモニタを接続しているのだ。
職場にいたのは、ビア樽の女性と、小湊課長のふたりだけだ。
うちの課員たちは、退社時刻とともに帰宅したようだ。
小湊課長が、机を女性の机の横にくっつけて、訊ねた。
「これでいいかな?」
「はいはい、ありがと。じゃあ、次に、あのディスプレイを、その机に載せて」
女性が指し示した先には、手押し台車に載せられた40インチくらいの大きな液晶ディスプレイがあった。
「はいよ」
気さくに返事して、小湊課長は取りにいこうとする。