プロポーズ(第7話)
それからニッコリと作り笑いを浮かべ、
「四方さん?」
「はい」
四方は低い背筋をシャンとのばし、期待のこもった目でわたしを見返す。
「あの……あまりこういう場所は、そういうお話をするのに、ふさわしくないんじゃないかしら? ね?」
「あっ」
たちまち四方はおねしょを見つかった子供のように顔をまっ赤にして、
「いやっ、これはっ、どうもっ」
盆の窪をかきながら、ぺこぺこと頭をさげた。
わたしは、うふふふ、と天使のような微笑みを浮かべて見せた。
このくらいでコトが収まればいいな、と思う。
なにしろ、この四方という男、恋愛対象にはまったくならないけれど、仕事の上ではけっこう重宝する人材だったりする。
わたしや四方が勤めているのは、ハマナカ工業という電子回路メーカーだ。大手の下請けでパーツを作って納める一方、独自ブランドで特殊な機械を作って、個別のお客に納品している。従業員が900名という中堅どころの会社だ。
わたしはドキュメント課という部署で、資料、カタログ、マニュアルなどを作成している。