プロポーズ(第7話)
「いえ、そのほうが正確なものができると思うし。ね、森さん、ここまできたら、あとはちょろいもんですよね?」
「なによ、四方、人使い荒いわね。あとでフランス料理おごりなさいよ」
「おお、いーですね、フランス料理。ハトハトベーカリーのフランスパン、とってもおいしいですよ?」
「ううっ、寒いわ」
わたしはあわてた。
「そんな。後日、どこかおいしいお店でごちそうしますから」
「いいのよ、気を使わなくて。四方ちゃんのためならエンヤコラだわさ」
「はあ……」
わたしがあっけに取られている間にも、森さんは超スピードでキーボードをたたき続ける。
「じゃあ、オレ、そろそろいいかな?」
と、成宮課長が立ち上がった。
「あ、すみません。今日はありがとうございました」
「うん。オレ、もう1時間くらい席にいるんで、もしわからないことがあったら、電話ください。それと、できあがったマニュアルのデータ、社内メールで送っておいて」
「はい。できあがりしだい」
「じゃ」
成宮課長が退席するのを、廊下まで出て見送った。