プロポーズ(第7話)
(それでも、これからも彼女は、恋と仕事のどちらかを選ばないといけないときには、きっとまた恋のほうを選ぶんだろうな)
川中さんの遠のいていく姿を見ながらそう考えたとき、ふいに、うしろから声をかけられた。
「今の人、友高さんの部下のかたじゃなかったですか?」
ふり返ると、笑顔の四方が立っていた。
「ええ、そうです」
「なにか込み入った事情がありそうですけど……訊かないほうがいいいですよね?」
「ええ、まあ……」
なんだ、プライベートでも、それなりに配慮できる大人なんじゃない。
と、ここでもちょっと見なおした。
「そうそう、森さんが仕上げてくれるまで、コーヒーでも飲もうと思って。友高さんもどうですか?」
四方が廊下のつきあたりに置かれた自動販売機のほうを指した。
「あら、いいですね」
ちょうどひと息入れたかったわたしは、四方といっしょに歩き出した。