明日、彼女がいなくなる。
彼女が消えた日
「好きだよ、狂おしいほど。

君だけが」


「あなただけが」




見つめ合う二人の男女は、そっと唇を重ね合った。




「はいカット!

以上で佐伯湊さんクランクアップになります」




パチパチと囲まれる拍手の嵐に作り笑顔を返す。

おめでとうございます、と花束を持って現れるヒロインに笑顔でそれを受け取ると嬉しそうに笑った。




「本当に嬉しいです。

この作品は僕にとっても本当に大切なもので、これからの俳優人生の中で糧になると思っています。

こうやって終わってしまうと寂しいですが、この作品が多くの人の心に届くよう頑張りましょう」




────────… ああ、めんどくさい。




楽屋に戻ると一瞬にして変わるスイッチ。




「寂しくなんてねえっつーの」


「ちょっと湊、誰が聞いてるか分からないんだから」


「これくらい言わないとやってられないって」



呆れてため息をつくマネージャーをよそに携帯を確認すると何件もの通知がある。


どれも共演したことのある女の人たちで「食事に行きましょう」だの「飲んでるから来てください」だの誘いのメールばかりで。


投げ捨てるように携帯を置くとマネージャーが眉を寄せてこっちを見た。




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