かおるこ連絡ノート
アキオがいないとき。
ハルオはそっと、アキオの宝物であるギターに、触れた。
見つかったらきっと、アキオはひどく怒るだろう。
分かっていても、触ってみたかった。

これがあれば。
ギターがあれば、ハルオも、アキオのように自由になれるだろうか。
そっと、アキオがギターを弾く姿を真似て、持ってみる。
不器用に弦を撫でてみると、不格好な音がした。

泣きたく、なった。
アキオの手にかかれば、あんなに夢を孕んだ音を出すのに。
ハルオの手のなかでは、ギターさえ、ハルオに現実を突き付ける。


「ひでぇ、音」
「なんだよハルオ、ギター弾きてぇのか?」
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