かおるこ連絡ノート
心配そうに柿本を見つめるのは、山倉の二代目だった。

実際には、まだ跡目は継いでいない。

できれば堅気にしてやりたい、と山倉組長が望んでいたこともあって、成人するまでは、と組頭が組長代行として取り仕切っていた。

だが、もう来月には、跡目披露をする予定だ。

親の仇もとれない、腑抜けの組だとあざ笑われながら。


「あまり飲みすぎるなよ。おまえ、ただでさえ肝臓やられてんだろ」

「飲まずにいられないことだってあるんすよ、坊」


言って、柿本はまた、グラスに日本酒を注いだ。


「おい、柿本」

「坊は!」


柿本は、震える手で、こぼれた日本酒に濡れた机をたたいた。


「坊は、くやしくねぇんですか?親父さんを殺したやつは、刑期を終えて出てきてるっていうのに」

「鉄砲玉だ。道具をいちいち恨んでも、しかたねぇだろ」

「そんなだから、うちの組は腑抜け組って言われるんすよ。あんたは、親父さんのことなんて、組のことなんて、何とも思ってないから……」
< 41 / 79 >

この作品をシェア

pagetop