かおるこ連絡ノート
顔を上げて、二代目が、笑う。

その、荒んだような笑みに、柿本は息を飲んだ。


「9年だ。9年、俺は我慢してきたんだ。わざと、親父をやった奴の顔も見ないようにしていた。知ったら、殺りたくなっちまう。忘れようとしていた。どれだけ馬鹿にされても、それが、おまえたちのためだと思っていた」

「坊……」

「俺は、おまえらを捨てる。親父の遺言なんか、くそくらえだ。……教えろよ、柿本。あいつの居場所。知ってんだろ?」


そうだ。

いまさら、柿本は後悔していた。

この、山倉組の後継者は、親父も苦笑するほど、喧嘩っ早くて曲ったことが嫌いだった。

どれだけの思いを、殺してこれまで生きてきたのか。


それを、柿本が、壊した。


「すんません!坊!勘弁してください!」

「いいから言え!あいつはどこにいんだよっ!」


襟首を掴まれ、諦めて柿本は、村上ベーカリーの場所を、告げた。



終わり
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