かおるこ連絡ノート
ホテルのラウンジに、葵は清楚な令嬢姿で現れた。


「化けたものだな」

「相変わらずですね、秀一坊ちゃま」


秀一の物言いに、気を悪くするふうもなく、葵が秀一の前に座る。
そうして、じっと秀一を見つめ、かすかに顔を曇らせた。


「どうした?」

「秀一様……お身体の具合が悪いのですか?」

「いや。なぜそう思う」

「お痩せになりました。それに……お顔の色も」


内心、秀一は葵の鋭さに驚いていた。
家族や、職場でも秀一の病を気付いた者はいない。
ぎりぎりまで、秀一は隠し通すつもりだ。
なのに、葵は一目で秀一の体調まで見抜くというのか。


「確かに、メイドとしては有能なのかな」

「秀一様、お身体の具合が悪いなら、早めに治療してもらうべきです」

「そんなことを話すために、おまえを呼んだんじゃない」


言い返して、秀一は、葵の前に茶封筒を差し出した。
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