かおるこ連絡ノート
「弟さんの方は、あなたを随分と慕っているようだ」

「生意気なだけの、厄介者だ。医学部にも入れない脱落者だよ。あいつは」

「バカな子ほど可愛い、という言葉もありますが」

「そんなのは、自分に被害が及ばないやつの言い草だ」

「まあ私共は、あなたと共存共栄できれば構いませんがね」

男が、笑う。


見抜かれている。
大麻の取り引き日を伝え、男が立ち去ったとたん、秀一はその場に座り込んだ。

「……きついな」

思いの外、神経戦の緊張が、身体に影響している。
弟を捉えられていたことが、ひどく、堪えた。

激痛に耐えかねて、その場に、蹲る。

ポケットに入れていた鎮痛剤を噛み砕いて、乾いた喉に、無理やり飲み込んだ。
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