かおるこ連絡ノート
止めろ。

叫びそうになる自分を、秀一は必死に抑えた。

勇次を、殺させはしない。
絶対に。

「兄弟喧嘩の末の殺し合い。よくあるニュースだ。ましてや大麻の取り引きが絡んでくれば」
「そうして、おまえは無傷で逃げられると思っているのか」
「無傷だと?お前のせいで、うちの組織は大陸の奴らに壊滅的に乗っ取られたさ」
「取り引きを、しないか?」
「取り引き、だと?」
「そうだ。俺はこれから自首して、全ては福建マフィアと組んでやったことだと話す。そうすればおまえは、奴らが警察と渡り合っている間に、奴らの利益を奪える」

痛みで、冷や汗が背中を伝う。
まだだ。
今、倒れる訳には、いかない。

「…本気か?」
「ああ。おまえが言うように、俺は弟がかわいい。そいつの命と引き換えなら、何だって喋ってやるよ」
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