かおるこ連絡ノート
「……兄さん」

男が、束の間、ためらう。
その瞬間、倉庫の入口で怒号が上がった。
「そこまでだ!」

男が思わず振り返る。
秀一はとっさに男に飛びかかった。
男の右腕を拳銃ごと、自分の胸元に抱え込む。

「兄さんっ」
「勇次っ、早く逃げろ!」

男と揉み合いながら、秀一は視界の隅に葵の姿を見た。

遅いんだよ。
ギリギリじゃないか。

「秀一さまっ」
気付いた葵が、駆け寄ってくる。

まあ、お陰で勇次を助けることができたことは、感謝してるけどな。

大麻の密売より重い罪で、こいつを勇次達から遠ざける。
そのために仕掛けた、罠だ。

秀一は、男を見上げて、笑った。

「撃てよ。憎いんだろ?俺の口を塞ぎたいんだろ?」
「貴様っ!」
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