かおるこ連絡ノート
惜しい。

妻も失い、めったに会うこともない甥の他には、家族のいない新左衛門が、唯一身内のように思っていたのが、この石塚だ。
わかっている。
自分の命だけではなく、共に闘う者の命も使い捨てる覚悟がなければ、勝てる戦いではない。
命を惜しんだものが、負ける。
それでも。

「島田様」
「石塚、俺は、おまえを死なせたくはない」

自分の命を捨てる覚悟は、つけてきた。
ここで、覚悟を決めなければならない。
他人の命も、捨てる覚悟を。

石塚が、顔をあげる。

「俺の命は、島田様に、とうに預けてます。俺を、ひとと思わないでください。島田様の手足と思ってください」
「何も聞かないで、決めていいのか?」

新左衛門の言葉に。
承諾の答えと知って、石塚が晴々と、微笑む。

この者を、失うのだ。

瞬きより少し長く。
新左衛門は目を閉じて、覚悟を、受け入れた。


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