諦めたけど好きです
片思いはドキドキ
私は目をこする。
私の目の前には、私より華奢な体で目は大きくて小顔でモデルさんみたいな可愛い可愛い…………男がいる。
「………本当に男なの?」
「そうだよ!男にしては可愛いでしょ!」
ニッと可愛く笑う。
「…そうなんだ……」
「お前知らなかったの?」
秀が聞いてきた。
「知らなかった……」
知っていたらあんなに焦ったりなんかしないよ。
「秀は知ってたんだ?」
「あぁ、同じクラスだしな。」
「ちょっと!!」
ユリナちゃん……………ユリナがいきなり止める。
「なに?」
「まだ私の告白の返事キチンともらってないわ!」
ビシッと私を指さす。
「どっち?付き合ってくれるの?」
「………1つ聞いていい?なんで女装なんてしてるの?」
「…………それはね、昔女の子みたいだって男の子たちにいじめられちゃってね、それで………ならいっそ、女の子でいようかなって…」
「…そうだったんだ」
「うん。そう言う設定なんだ。」
「……そう。それは大変で……………設定?」
「うん。設定。その方がかわいそう、しょうがないって思うから。本当はただの趣味。」
「なんだそれ…………………」
ちょっと疲れてきた…………
「でも、女の子が好きだし男の子と付き合える訳じゃないから。安心して。」
「はぁ……」
「で、どうなの?」
告白の返事のことをいっているんだろう。
「俺たちは外にいるから……」
秀と光樹がきをつかってくれたのだろう。保健室から出ていった。
「……………………………」
「………………………………」
「ごめん。ユリナの気持ちは嬉しい。けど…私には好きな人がいる。だから、その気持ちは受け取れない。」
「……………そっか。わかった、ありがとう」
そう言った瞬間、ユリナ笑いながら泣いた。
「あはは。すごい短い片想いだったなぁあはは。」
「…………………」
「片思いは辛いから、短い方がいいけどさすがに新記録。」
「ごめん……」
「悪くないのに、謝んないでよ。私ね、こんなにキチンとした告白の返事もらうのはじめてなの。」
「そうなの?」
「だって、男なのに女装してるからまわりは女の子だって思ってるしさ。それを告白の時にカミングアウトしたら、絶対にひかれるしね。だから…ありがとう」
「私はなんも……」
ユリナは涙を拭いた。
「頑張ってね!那奈ちゃんと、秀君がくっつくの応援してるね!」
「ギャァー!なんでわかったの!?」
「え!?バレてないとでも思ったの!?もろバレよ!?」
「………マジか」
そんなに分かりやすいかな……
びっくりした。
保健室を出るなり、女の子から告白攻めで………凄かった。
逃げるのが大変だ。
男子と違って手荒に出来ないしな……
「あれ?光樹とユリナが………ありゃ?」
「…はぐれちゃったな」
秀と私は立ち止まった。
どうやら、女の子たちから逃げる時に光樹と、ユリナとはぐれてしまったみたいだ。
「……仕方ねぇ。落ち着いたし、二人でまわるか?」
「え!?」
「………イヤならいいぞ。」
「まわる!!まわりたい!まわらせてください!」
「わかったよ。いくぞ」
わぁぁ!文化祭で二人でって…カップルみたい!
頭のなかはお花畑だ!
「お!秀と那奈じゃん!」
『『ギクッ』』
私と秀は固まった。
二人とも声でわかる。前回からこの人にいいイメージは全くない。
「二人だけか?なら先生とまーわろっ!」
「「結構です!」」
「なんで~~~」
「彰先生…この前はドリンクありがとうございます。」
あ、秀の目が怖い……
「お、おー大丈夫か?その…体調は…」
苦笑いだな。彰先生。
「はい。絶好調です。……お礼させてください」
「へ?ゴフッ!!」
あ、飛び蹴り。あ、鉄拳。あ、かかと落とし。
『ちーん』
『彰先生のHPは0になった。』
「いくぞ那奈。」
「うん。………すごい怒ってるね」
「当たり前だろ、あんなことやられて」
「まぁ確かに、あのドリンクは…」
「ドリンクだけじゃねぇよ、………お前、ちょっかい出されただろ?……………………………それも…だし」
最後の方は小声でちょっと聞きづらかった。
でも……………それって………………ヤキモチ妬いてくれたってこと?
秀の顔が見えない。
今どんな顔してるんだろう。
すると、少し離れたところにユリナと光樹がこちらを見ていることに気づいた。
目が合うと、ユリナは私にグッと親指をつきだした。
…あいつ、わざとはぐれたな。
「はぁ……」
全く、心配した私がバカみたいだ。
そんなこと思っていると、あれ?
秀はどこだ?
まずい、見失った。
「キャァァァ」