諦めたけど好きです
SIDE秀
「好きなの。…………私の好きな人は秀なの」
「!!まじかよ!!」
…………聞こえてるんですけど…。
どうやら恋バナをしているみたいだ。
丸聞こえだけど。
俺は幼なじみの那奈の方を見た。
顔面蒼白になっている那奈がこちらと目があった。
ヤベッ!
とっさに目をそらした。
自己紹介が遅れた。
俺の名前は、松井 秀。
那奈とは幼なじみで仲は良い方だと思う。
「なぁ秀!那奈がおまえのこと好きみたいだぜ?」
「へぇ」
……こいつめんどくさいんだよな…………
俺はこれ系の冷やかしは好きじゃない。
早く話題をそらしたい。
「なぁお前はどうなんだ?ん?」
「……べつに」
……どっか行けお前。
「まぁ、性格は女じゃないけどよ。見た目はまあまあいけるんじゃね?那奈とお前がならんでもべつに………」
「うるっせぇな!?タイプじゃねぇよ!あんな女!!」
「…………そっか………」
あ、やべ。変なこと口走っちゃったな。
まぁだいじょぶかな。
「はぁ………」
『私の好きな人は秀……』
「っっ!!」
那奈の言葉が頭の中でリピートされる。
いや、さすがになんとも思ってない女にあんなこと言われると………
顔が赤くなっていくのがわかる。
俺は本人に気づかれないように那奈の方を見た。
「…………………」
?なんか………泣きそうな顔してる?
まぁそうだろうな。
自分の秘密をあんな形でみんなにバレたらそりゃぁ、おれでも泣きたくなるわな。
………………でも……なんか………ちょっと嬉しいかもな………
なんて、俺も男だからそんなバカなこと考えてたんだよな。
あの時は……………ね。
それから俺は那奈とほとんど話さなくなった。
話しかけようか迷うこともあったが、何を話せばいいか解らなかった。
そして時間が経ち、夏になり祭りの日がやって来た。
「なぁなぁ。王様ゲームしようぜ!」
「おぉー!いいな!それ!」
友達がさわぎだした。
なんで祭りの日に王様ゲームなんだよ。
「ほら!早く秀もひいて!」
「…はいはい。」
「あっ!俺王様ー!じゃっ、2番の人は…………好きな人発表!」
頭悪い奴かよ……
「………………………………」
「………………………………」
「………誰が2番引いた?」
誰も出てこない。
まさか……………
「あ、俺だった………」
「え!?秀かよ!」
俺はくじを引いたがなんの数字か見てはいなかった。
「さいっあく。」
「……待った!!」
頭の悪い王様が大声を出す。
「…………やっぱり好きな人発表じゃなくて、告白にする!!」
……………………はぁ?
「…いや、待て待て。おかしいだろ。なんで……」
「那奈に告白しろ!」
「……嫌だよ…」
いくらなんでも、そんなことで告白するとかは嫌だ。
「おい。王様の命令は絶対だぜ?」
みんなもノリノリだ。
早く終わらせないとめんどくさそうだ。
そして後悔した。
なにがなんで断っておけばよかった。