諦めたけど好きです


「光樹~おはよ!」

「おはよ!那奈!」


私は校門の前で光樹に挨拶した。


「なぁ、数学の宿題やったか?やったんなら教えてほしいんだけど…」

「やばっ、なんもやってない……」

頭を抱えるわたし。

そんな時後ろから

「おっはよー!!なんで頭抱えてんのさ!」

バンッと背中を叩かれ、振り替えるとユリナガいた。


「おはよ。ユリナ。朝から元気だね」


「そおかなぁ?あっ!そうだ那奈?」


「なに?」

「あのさぁ、そろそろアレどうにかしてくんない?」


「アレって?」
私は首をかしげる。

なんの話だ?


「アレのこと」


ユリナは玄関の方を指差す。

見たら私の下駄箱の前に何人もの女子がいた。


「……忘れてた…」


「忘れてたよね、『那奈さん同盟』……』


文化祭の後に女子達が作った同盟。

一応私は女なのにカッコいいとか学ラン着てほしいとか…


「最近やたらラブレターが来ると思ったら………アレか」

「光樹くんと那奈が付き合ってから2ヶ月もたつのに…女の子は熱いねぇ~」


のんきに言うなよ。こっちは大変なんだから…








「那奈さん!これ受け取ってください!!」


「はい?」


「こ、これ…クッキー作ったのでよかったら…」

「あ、ありがとう。美味しそうだなこれ。大事に食べるよ」


「!!ありがとうございます!!」


そう言って女の子は走っていった。

「……………お前、すごい人気だな…」


「…………うん。」

否定はしない。


「てか、なんであいつら那奈には俺がいんのに告白してくんだよ!訳わかんね…」

「なんで機嫌悪いの?」

「………別に悪くないし」

なぜすねてる?

「光樹くん、那奈!」

今度はなんだ、誰だ。

「…げっ」

「光樹くん!これ調理実習で作ったクッキー!食べない?良ければ俺が光樹くんに食べさせてもOKで…」


このお約束の展開は海里だ。


「いらっねぇよっっ!!自分で食べろ!くんなっ!」

「……ぶー」

光樹が私の背中に隠れる。

海里が口を尖らせて拗ねている。


「…せっかく作ったのに…………」


「……海里…………」

「………あっそうだ!那奈!!那奈に言いたいことあったんだ!光樹くん。ちょっと那奈を借りてくね!」

「ちょっ、は!?どこ行くの?」

思いっきり手を引っ張られ走らされる。

「屋上にいくよ~!」


今日は本当に色々な人に振り回されるな…………




「よし、誰もいないね!………ねぇ那奈?」


「なに?」


「…………光樹くんと付き合って良かった?」


一瞬ドキッと胸がなる。


「…う、うん。どうして?」


「……秀くんは諦めたの?」


「え!?あいや……それはその……」


海里は何を言いたいんだ?
私と光樹が付き合ったときは笑顔で祝福してくれたのに…


「…なんで光樹くんを選んだの?」


「それは…………………」


本心を言うと秀を諦めるために光樹と付き合った。


「…確かに光樹くんは素敵だよ。選んでも損はない。あんなにかっこよくて、たまに犬みたいな可愛さがギャップ萌えで、怒るときも男っぽくていいし、足も早いし笑顔は素敵だしそれに…」


「ストップ!!もう良いよ!!熱く語りすぎ!」

「そお?もういいの?」


目を丸くしてケロッと言う。

こんなにカッコいいのちょっと残念だよなこの人………


「…なんで海里は秀のこと聞いてくるの?」



「……だって……………好きな人たちには幸せになってほしいじゃない」



最後の方は聞き取れなかった。

「?ごめん海里。もう一回言って?」


「……何でもないよ。じゃぁね」

海里は笑顔で去っていった。


「…なんなんだよもう…」


秀のことをなんで……………



思い出させるの……



「…おい」


後ろから声をかけられる。


私は固まった。

声でわかる。



「………秀…」



「……ここでなにしてんの?」


「えっと……風に当たりたくて…」


「…寒いから風邪引くなよ」

そう言って秀は海里と同じように出ていった。




久しぶりに話した。



秀の誕生日に喧嘩して以来、まともに話さなかった。



「………秀はどう思ってるのかな……」



前に私は、秀に挑戦状を送った。


あなたが好きで絶対に振り向かせてやると。


けど……私はもう…


諦めた……………………




「あ、あれ?秀と海里さっきすれ違わなかったのか?時間的にすれ違ってても遅くなかったと思うけど…」


ま、いっか



久しぶりに1人になった。


もう少しここにいよう。


そのときに私は気づかなかった。



屋上のドアの向こう側に彰先生と海里と秀がいたことに



何を話しているのも知らなかった。
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