【短】放課後の恋人

 人気のない昇降口。
 上履きを履くのも面倒で、靴下のままで廊下を歩く。


 バレー部のわたしは、最初に体育館に入って部室を覗く。


 まだ残っていた先輩たちに事情を話して、ロッカーを見てみるけれど、目当てのものはなかった。


 午後の夏期講習の時?
 まだ、机の中にあるのかな。


 わたしは先輩たちに挨拶をして部室を出た。
 さっきよりも静かな廊下。職員室も人が少ないみたい。


 走り続けて乱れた呼吸を整える。



「久しぶり」



 声をかけられて、初めてわたしは思い出した。
 放課後限定の友達がいたってこと。


 これまで忘れていたのが不思議なくらい。


 教室に入ると、懐かしいその顔がわたしを迎えてくれた。

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