【短】放課後の恋人
「樹……くん」
急に思い出す。
忘れてしまいそうな、つまらない会話の数々を。
淋しそうな顔。
横顔。
日に照らされた綺麗な、樹くんのこと。
「……久しぶり」
久しぶりというのもおかしな感じ。
同じクラスで授業受けたり、すれ違ったりはしていたのだから。
樹くんは、クラスで見せる笑顔とは違う淋しそうな顔をしていた。
初めて会った日の横顔と同じ。
「探してるの、これだろ?」
「え?」
わたしは、なぜ彼がスマホを持っているのかわからなかった。
どこかに落ちていたのかもしれない。
そんなことを思っていたら、
「ごめん」
樹くんは急に謝った。