【短】放課後の恋人


「樹……くん」



 急に思い出す。
 忘れてしまいそうな、つまらない会話の数々を。


 淋しそうな顔。
 横顔。
 日に照らされた綺麗な、樹くんのこと。



「……久しぶり」



 久しぶりというのもおかしな感じ。
 同じクラスで授業受けたり、すれ違ったりはしていたのだから。


 樹くんは、クラスで見せる笑顔とは違う淋しそうな顔をしていた。
 初めて会った日の横顔と同じ。



「探してるの、これだろ?」

「え?」



 わたしは、なぜ彼がスマホを持っているのかわからなかった。
 どこかに落ちていたのかもしれない。



 そんなことを思っていたら、

「ごめん」

 樹くんは急に謝った。

< 11 / 20 >

この作品をシェア

pagetop