【短】放課後の恋人


 わたしは無理やりその腕を振り払う。


 カバンなんてどうでもいい。
 教室を出たい。離れたい。


 慌てて一歩を踏み出した時、樹くんに押されるように黒板で頭を打った。



「い――――」



 痛いと言う前に、樹くんの両腕が風を切る。


 激しい音にびっくりして目を瞑ってしまった。


 恐る恐る目を開けてみる。
 背の高い彼が目の前で見つめていた。


 黒板についた両腕に挟まれて逃げられない。



「ふざけるなよ」



 初めて怒った顔を見た。
 泣きそうなくらい真剣で、でもわたしは思っていた。


 すごく綺麗だ、と。

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