【短】放課後の恋人


 真剣な顔をして、感情を露にする樹くんは本当に美しい。


 いつも気だるそうにしている樹くんとは比べ物にならないくらい、カッコいいと思った。



「オレの気持ちを掻き乱して、そのくせ冷たい態度でまたオレを混乱させる」

「そんなの、わたしは知らない」



 静かな教室。


 開いた窓から蝉の声。ついで葉が擦れる音が、わたしの心を掻き乱す。


 やめて。
 これ以上、冷静でいられない。



「なんで……」



 樹くんは下を向いて、掠れるような声で言った。



「知らないよ」

「七海はなんで、他の奴らと違う! オレを正面から見ようとしない!!」

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