【短】放課後の恋人
一通りの会話を済ませると、彼女は名残惜しそうに教室を見てから歩き去った。
そんな彼女の行動に疑問を感じながら、開いているドアから中に入る。
教室はまだ日に照らされている。その暑そうな雰囲気に、思わずため息を吐き出す。
「…………あ」
そこに、誰かが残っているなんて思わなかった。
ぼんやりと外を眺めて、時々ため息をつく。
淋しそうな目元をした彼。
わたしはそんな姿を綺麗だと思った。
――――屋島樹《やしま たつき》くん。
わたしは思わず、見とれていた。だって、そんな淋しそうな顔、見たことなかったから。
高校に入学した当初から人気者。
整いすぎている顔立ち、高い身長。
優しく微笑み、全ての人を魅了する穏やかな性格。
勉強も運動も出来て、欠点を探す方が難しいくらいの人。
男女ともに人気があって、同じ高校一年生とは思えないくらいの出来た人。