【短】放課後の恋人
「オレは羨ましいけどな。えっと確か……七海ちゃん?」
「すごいね。名前知ってるなんて」
「オレの特技だよ」
そう言って樹くんは立ち上がった。
カバンを持って、やっと帰る気になったようだった。
「一緒に帰る?」
「誤解されたくないから、やめとく」
残念だなと、からかうように笑って教室を出ていく。
そんな樹くんを見送って思った。
なんだ。みんなと変わらない普通の高校一年生だよ。
それがどうして、あんなに人気があるんだろう。
考えて、ため息まじりに答えが出た。
「顔だな、確実に」
悲しい現実を見てしまった気がする。