【短】放課後の恋人

 それから。
 何度も教室で、一人でいる樹くんに会うようになる。


 忘れ物を取りに戻ると、今までは誰もいなかったはず。
 それがあの日を境に、樹くんはいつも教室にいた。


 不思議だと思いながらも聞けずにいた。何となく怖くなって。



「七海」

「呼び捨てやめない?」

「やだ」



 いつも印象に残らないような普通の会話をして、別々に帰る。それが当たり前。わたしたちは教室を出ると他人になる。


 ちょっと変わった関係。
 友達?


 なにか違う。
 放課後限定の友達。


 うん、そんな感じ。


 こうした関係を続けて二週間。
 ついに、夏休みがきた――――。

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