隠れ蓑〜偽り恋人・真実の愛〜
聞こえていたのは心無い言葉ばかりで、静かに涙を流す事しか出来ない。
もう、、無理だ、、、。
ここで働くのは限界だ、、、。
心が死んだように冷たくなって抵抗する事さえも諦めて呆然とされるがままになっていると急に体が引っ張られお客様から解放された。
と同時に大きな背中が視界を埋め尽くし、ロビーからの視線も感じない。
余りにも一瞬の出来事で何が起こったのか理解出来ずにいるとお客様の怯えた声だけが耳に入った。
「つ、津川さんっ、、!やだな冗談ですよっ!?そんな怖い顔されないで下さいよっ、、!!」
背中の主が営業の津川さんだということは分かったが、どんな表情をしているかなんて彼の背中に隠されている私には分からない。
「、、冗談、、?冗談でこんな人目につくロビーで堂々とセクハラですか?」
「セクハラだなんてっ、、!!!ど、同意の上ですよ!?寧ろ彼女が誘ってきたんですから!!!」
裏返しながら大きめな声を上げたお客様の声に恐怖が蘇ってビクッと肩が上がる。
すると今度は大きいスーツのジャケットが視界を覆った。
「そうですね。これはセクハラなんかじゃない。立派な犯罪だ。では何故彼女はこんなに震えて怯えきっているんですか?顔も真っ青だ。、、噛み締め過ぎて唇からは血が出てる。彼女のこんな姿を見て、これが同意の上だったなんて誰が信じるんでしょうね。」