隠れ蓑〜偽り恋人・真実の愛〜
そしてロビーにいる人達の方に体を向け、言い放った。
「、、知ってる?猥せつな行為に及んだ現場を止めずに見ていた人間も罪に問われる。俺がエレベーターから降りた時、ロビーの全ての視線は西村さんに向いていた。だからここに居る全員が加害者だ。」
彼の言葉で、先程まで騒がしかったロビーが一瞬で静まり返る。
「あまり波風を立たせなくないけど、これ以上彼女を悪く言うなら、、遠慮しないから覚えておいて。」
そう言って足早にロビーから連れ出された。
連れて行かれたのは医務室で、着いた瞬間抱き上げられベットへと降ろされた。
「あ、あのっ、、、私っ、、まだ業務中で、、、っ!」
その状況に戸惑っていると肩まで布団が掛けられた。
そして頭を撫でられた。
「あんなことがあったのに仕事なんて無理だよ。君の上司には俺から言っておくから、今は何も考えずに眠りなよ。、、しっかり眠って今日の事は忘れればいい。」
その撫でられた手が優しくて、なんだがホッとして涙が溢れた。
「っ、、、!す、みませっ、、、。今日は本当にありがとうございまっ、、したっ、、。」
「いや、元はといえば俺のせいだ。俺の方こそ本当にごめん、、、。また後で様子を見に来るからそれまでゆっくりね。」
涙でボヤけてよく見えなかったけど、津川さんは切ない表情を浮かべながらも優しく微笑んでいた。