隠れ蓑〜偽り恋人・真実の愛〜
彼が出て行った後も涙は止まることが無かった。
今まで溜め込んでいた涙が一気に出た。
こんなに泣いたのは久しぶりで、最後には泣き疲れて眠ってしまっていた。
目が覚めた時には外が暗くて、辺りを見渡すと枕元にメモ紙を発見した。
書いた人物は莉子ちゃんで、ロビーでの事を聞きつけて心配して来てくれたみたいだ。
私が眠っていた為、書き置きを残してくれていたみたいで目が覚めたら連絡するようにと書かれていた。
携帯を取り出し、時間を確認するともう21時を回っていて庶務課の勤務時間を大幅に過ぎていた。
この時間ならもう家に帰っている時間で、莉子ちゃんへの電話を躊躇していると入り口の方から声がした。
「庶務課の山下さんならさっきまでここに居たよ。凄い心配してたから電話してあげた方がいい。きっと連絡を待ってる。」
声のする方に視線を向けると、入り口の近くの椅子に座っている津川さんの姿。
「つ、津川さんっ、、!いつからそこに、、?!」
「1時間前くらいからかな。ここの施錠を頼まれたからね。それよりも早く連絡してあげて?」
私のせいで津川さんを引き止めてしまっていたようで申し訳ない。
でも取り敢えず、莉子ちゃんに連絡を入れようと履歴から掛けると直ぐに繋がった。