隠れ蓑〜偽り恋人・真実の愛〜
気まずくなって拳を握りしめて俯くと、大きい手がそっと拳を包み込むように重ねられた。
『じゃあさ、、俺が君の隠れ蓑になってあげるよ?』
気づけばアパートの前に着いていて、ハンドルから手を離しこちらに体を向けて真剣な表情で見つめられていた。
その真っ直ぐな瞳から目が晒せない。
「か、隠れ蓑、、ですか、、、、?」
やっとの思いで言葉を発すると目を細めた彼がゆっくり頷いた。
「、、そうだよ。俺が君の恋人になるよ。そしたら君は異性からアプローチをかけられなくなるだろうし、堂々と君を守ってあげられる。」
「津川さんにそんな事をして頂く理由がありませんっ、、!!!」
「理由ならあるよ。ぶっちゃけ俺も困ってるんだよね。誰とも付き合う気ないのに異性からのアプローチが酷くてね、、嫌気がさしてる。だから君を女避け利用したいんだ。まさにお互い利害の一致だと思わない?君も俺もそういう煩わしい事から解放される。」
「利害の、、一致、、、?」
「そう。俺を利用してよ。そして君の存在を利用させて欲しい。『偽りの恋人』として。」
『偽りの恋人、、、?』
「勿論、、ずっとじゃないよ。どちらかに本命の相手が出来たらこの関係は解消するってはのはどう?いわゆる期間限定。、、どうかな?」