隠れ蓑〜偽り恋人・真実の愛〜
そして朝から退職届を提出した。
人事部の部長は渋い顔をしながら何か考える素ぶりをしていたが、最終的にはそれを受け取り机の中に仕舞ったところをみると一応受理されたんだと思う。
それからは業務時間は心を無にして必死に取り組んだ。
昼休みは莉子ちゃんと社内で過ごす残り少ない時間を大切にしたいと思った。
あれから真美ちゃんと業務以外の会話をしなくなった。
真美ちゃんにもちゃんと伝えておきたいと思ってはいるが話しかけられる雰囲気じゃない。
結局、伝える事が出来ないまま退社時間になってしまった。
「お先に失礼します。お疲れ様です。」
「、、お疲れ様です。」
真美ちゃんの後ろ姿を見送って溜息が漏れた。
きっともう許して貰えない。
前のような関係には戻れない。
自業自得なのにやっぱりそれが悲しくて、気が落ちてしまう。
残りの仕事を終わらせ、トボトボと退社していると光さんの車が目に入り急いで駆け寄る。
「光さんっ、、!」
実は出社しながら莉子ちゃんに聞いた話だと、昨日アパートまで送ってくれたのも食事代を支払ってくれたのも全部光さんだったという事だった。
本当に申し訳なくて直ぐに頭を下げた。