銀河のアイナ
4話 「夢を置き去りに」
先日は
後輩田口君に
夜までゴールポストの撤去などを手伝われ
家に帰ったらヘトヘトで寝込んでしまった
それだけではなく
様々な疲れが蓄積している事に気付いていた
ある朝 俺は強烈な悪寒で目が覚めた
なんか昨日から
体がだるいなぁと思っていたが
寒気もするし・・・・
足とかガクガクする
起き上がるパワーも無かったが
淡々と冷静を装い制服に着替える
下の階の茶の間のキッチンの隣にある
米びつケースの横に隠してあった
カロリーメイトを手にし玄関へ向かう
俺「じゃぁ 行ってきますー」
ネズ母「あいよー 給食全部食べるんだよー」
・・カロリーメイトを握りしめる俺・・・・
こんな体調で給食完食なんて
とんでもない罰ゲームだろうが
カロリーメイトでさえも
口の中が乾いて窒息しそうな勢いで絶不調なのに
母親ってのは・・・
一大事に限って
他人行儀に扱われるのは俺だけだろうか
学園までの道のりがいつもより遠く感じる
常に坂を上っている気分だ
だが無事いつもと同じ時間に学園に着いた
という事は
登校中の坂は通常通り平坦であったという事だ
(当たり前だ)
♪キーンコーンカーンコーン♪
俺「よう おはよう・・・・」
ジャンプ「よう!おはっ
ん?
てかお前顔色悪いな どうした?」
俺「多分風邪をこじらせたみたいだ
でも熱は無いと思うから気合で乗り切ってみせる」
ジャンプ「そっかぁ
お前は昔から元気そうだし
多分俺が100発近く素手で殴ったとしても
簡単には死にゃあしないだろうけどな」
俺「・・・はぁ」
ジャンプ 「・・・ただなぁ...ネズ・・」
俺 「ん?」
ジャンプ 「アイナは今日
とうとう学校休んだぞ」
俺 「はぁ!? またなんで!?」
ジャンプ「いや、俺も詳しくは聞いてないけど、
今朝アイナのお母さんから
アイナの具合がどうしても悪いので
今日は自宅で安静にさせたいと
担任の鈴木に電話があったらしい
「さすがに鈴木も心配だから
無理に来いとは言えないだろ?」
俺「まぁ・・そうだよな
アイツは昔から健康体そのものだったし
「インフルエンザとかじゃなければいいけど」
ジャンプ「まぁ・・・
病気には免疫力と抵抗力が重要だという事で、
さっき後輩の田口に栄養のつく物を買わせて
アイナの家まで差し入れさせたぞ!」
はぁ..
お手上げだ
俺「お前らなぁ
アイナに対して
優しさポイントをどれだけ上げても意味ないぞ?
あいつは恋愛とか、男とか
全く興味ないんだからな?」
ジャンプ 「だよなぁ!笑」
ジャンプは顔を真っ赤にしながら爆笑している
~2時間目 数学~(だったと思う)
俺は 授業中に激しい悪寒
座っていても半分夢の中だ
H先生「おい!お前顔色悪いぞ!
どうした!」
俺「いや・・・・すみません 今朝からなんです・・・」
H先生 「ん?かなり熱があるな」
「おい!誰か保健室に連れていってあげてくれ!」
同級生の付き添いで保健室に到着
保健室の森先生「あら!ネズ君
大丈夫かい?
アンタらしくないねぇ・・」
俺 「すんません・・・」
森先生「ちょっと熱計るか!」
俺「・・・・・・・・」
~ピピ!ピピピピ!~
森先生「ありゃー!39度超えてるじゃん」
「仕方ないな
この時間は休んでいきなさい!
鈴木先生には伝えておくから」
「今日も3つともベッド空いてるから
好きなベッド使いなさい!」
俺「はい・・・すいません・・・・」
森先生 「何度謝っても風邪は治らん!(笑)」
俺は、3つあるベッドの中から
何も考えずに消去法で窓際のベッドを除外
真ん中も落ち着かないので除外
結局、一番左の壁側のベッドを選び
そのまま倒れこんだ
「そういえばアイナがいつも寝ているベッドだな」
確かに
窓側よりは
壁側のベッドの方が落ち着くかもしれない
だが「何故?」と聞かれると説明出来ない
というか、我ながら情けない・・・
受験を控えた時期に風邪をひくなんて、
将来俺は立派な仕事に就けるのだろうか
というか
そもそも就職出来るのだろうか・・・
もしかしたら
お金に困って自販機の下に
手を伸ばしてるような大人に・・・・
やめよう・・・
う いかん・・・
寝ようにも頭がクラクラしてかえって寝れない
こういう時は、
ポジティブになったほうがいいんだ
窓際のインテリアが目に入る
「しかし」
「本当にここの学園の保健室は綺麗だな・・・」
日差しが眩しい
窓際を背にし、壁向きになる
横向きになり
ベッドと壁の隙間に目が入る
「案外」
「こういう場所とかに小銭とかが落ちてるかも」
ふと、壁とベッドの隙間の下を見ると・・・
「あれ?
「これはもしや・・・」
見覚えのある物を見つけ
それを拾い上げて確認
「あら!? これは・・・」
見覚えのあるAの文字が入った
赤のリボン
「やっぱりこれは
アイナが大事にしてたリボンだ!
「届けないと!」
だが・・・
俺はすぐにアイナに届けようとは思えなかった
俺は....
アイナの夢をどうしても応援出来なかった
「夢」という言葉に険悪感を感じているからだ
俺以外の同級生やアイナの友達は
皆アイナの事を応援している
だが、
それが全て
「偽善で嘘臭く」感じていた
~ふと、頭の中で
ある人の言葉が浮かんできた~
ある女性
「夢を追う事はとても素晴らしい事よ」
「でも」
「夢を追い過ぎると周りが見えなくなって
盲目になる
応援してくれる人だけじゃなく、
逆に反発する人達も増えてくるの
「そしていつか一気に罰が当たる」
アイナの同級生で昔からの友達
「涼子マドレーヌ」さんの言葉だ
アイナの居ない場所で
密かにクラスメイトと話していた言葉だ
涼子さんが
「アイナ」の事を揶揄した訳ではないのは
100も承知だ
だが
世の中にはそういう考え方もある訳だ
「俺はアイナへリボンを渡せなかった」
そしてその後、
175320時間、時計の針が右回りした
あれから20年の歳月が経過した