突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「使用人として、俺も連れていけって言ってるんだよ」

 気恥ずかしいのか、そっぽを向いた彼の眉間にはシワが刻まれている。

 こんなことを言うなんて、心底意外だった。私たちの関係性はと聞かれたら、主従関係と答えるのが一番適切だと思う。現に真紘は、物心がついたころから清仁に『お嬢様たちを守るのがお前の役目だ』と口を酸っぱくして言われていた。

 でも、子供だった私にとってずっと同じ家で育ってきた彼はいつだって遊び相手だったし、真紘もそれに近い認識をしていると思っていたのに。

 身長はとっくに追い抜かされた。それでも、中身は変わっていないと思っていたけど、いつからこんなに逞(たくま)しくなったんだろう。

「ダメよ。立花家に失礼でしょ。それにあなたは、ここにいないと」

 晴れやかな気持ちになった。

「いつかは、清仁みたいになるんでしょ? それとも、私がいなくなるのがそんなに寂しい?」

 からかうように言うと、彼は少しどもってから、横目でこちらを睨み付ける。
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