突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「……ったく。いつまでも弟扱いしやがって。まぁお前みたいな気の強い女、一緒に住んだら熨斗(のし)つけて返されるに決まってるから、せいぜい頑張れよな」

「うるさい」

 投げるフリをした枕を抱き締めた。

「家のこと、頼むわね」

「あぁ。たまには様子見に行ってやるから、それまで追い出されんなよ」

 迫ってきた彼の指が、私の額をピンッと弾く。一瞬痛さに顔を歪めるが、幾分か柔らかくなった彼の表情を見て安堵した。

 しばらくしたらこの生意気な憎まれ口がなかなか聞けなくなると思うと、やっぱり寂しい。

 私は真紘が出て行ったあと、枕に強く顔を押し付けて、知らぬ間に眠りについた。
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