突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「いつもそれなんだから。ちゃんとおじいちゃんに、残業代請求しないとね」
そんなことを言いながらパンプスを脱いでいると、玄関にある一足の革靴が目に入った。
「お客様?」
あれは、祖父や父のものではない。こんな時間に来るぐらいだから、会社関係の人だろうな。そう思い、訊ねる声を忍ばせた。
「はい、立花様がお待ちになっていらっしゃいます」
想像もしていなかった答えに、息が詰まるほど驚く。
「あ、あの人が!?」
「二十時頃にお見えになりました」
二十時って、一時間以上待ってるじゃない……。
平然と言う清仁の横を通り過ぎ、速足で廊下を進む。居間と通路を挟んで隣にある、来客用の座敷の襖を勢い良く開けた。
スーツ姿で正座して待っていた彼が、驚いた様子でこちらに視線を注ぐ。
……本当にいた。
――結納を交わしてから、十日ほどの月日が経っていた。あの現実的でない一日から日常に戻りつつあった私は、あれはおかしな白昼夢でも見ていたんじゃないかと思い出していたのに。この男の姿を目にしたら、嫌でも現実に引き戻されてしまった。
そんなことを言いながらパンプスを脱いでいると、玄関にある一足の革靴が目に入った。
「お客様?」
あれは、祖父や父のものではない。こんな時間に来るぐらいだから、会社関係の人だろうな。そう思い、訊ねる声を忍ばせた。
「はい、立花様がお待ちになっていらっしゃいます」
想像もしていなかった答えに、息が詰まるほど驚く。
「あ、あの人が!?」
「二十時頃にお見えになりました」
二十時って、一時間以上待ってるじゃない……。
平然と言う清仁の横を通り過ぎ、速足で廊下を進む。居間と通路を挟んで隣にある、来客用の座敷の襖を勢い良く開けた。
スーツ姿で正座して待っていた彼が、驚いた様子でこちらに視線を注ぐ。
……本当にいた。
――結納を交わしてから、十日ほどの月日が経っていた。あの現実的でない一日から日常に戻りつつあった私は、あれはおかしな白昼夢でも見ていたんじゃないかと思い出していたのに。この男の姿を目にしたら、嫌でも現実に引き戻されてしまった。